DJXROAD

DJ XROAD (DJ Cross road) ディージェイ・クロスロード バイノーラル・プロセッシングやAmbisonicsなど

Waves B360 Ambisonics Encoderの使い方

ここでは、DAW上におけるWaves B360 Ambisonics Encoder の使い方を解説します。

 

なるべくわかりやすいように解説しておりますので、正確な言葉の定義などは、メーカーのHPなどにて確認してください。

 

これはWavesプラグインですが、ほかにもFacebookから出ているFB360など、ほかのVR系プラグインでも参考になると思います。

 

今回はCubaseで解説します。ほかのDAWでは微妙に必要な操作が違ったりします。

 

このプラグインは簡単に言えばVR音響を作れるものです。このプラグインが行う処理としては、4chのマルチチャンネルの音声ファイル(Quadro音声ファイル)の情報を書き換えているようです。Quadro音声ファイルはL、R、Ls、Rsという構成で、その情報の内容は

L Left 左前の音量

R Right 右前の音量

Ls Left-surround 左後ろの音量

Rs Right-surround 右後ろの音量

という感じになっているのですが、

f:id:DJXROAD:20180504201754p:plain

 

この情報をこのプラグインではW、Y、Z、Xという情報に置き換えています。これは

W 全体の音量

Y 左右の広がり (Yは縦のイメージがありますが横)

Z 上下の広がり

X 前後の広がり (Xは横のイメージがありますが前後)

参考文献:アンビソニックに関するあれこれ - Qiita

という情報になっています。

(このプラグインにおいては、YZXは「広がり」というより「中心からの距離」を表しているように感じられる)

従来のQuadro形式と同じ4ch形式でも、このWYZXの情報であれば、上下も表現できるようになります。

f:id:DJXROAD:20180504210355p:plain

 

この音声ファイル形式をAmbisonicsのB-formatの1st orderというようです。詳細な言葉の意味は話が長くなるので置いておきます。

 

 【実践】

では、CubaseでVR音響を作っていきます。ほかのDAWでも、基本的には同じ要領で可能だと思います。

 Ambisonics B-formatの1st orderでは、4chの信号を扱えるDAWとオーディオドライバーが必要です。オーディオインターフェースとそのドライバーには2OUT以上は無い場合も多いので、ASIO4ALL(無料)などをインストールされることをお勧めします。

また、このB360でのミキシングをDAW内でプレビューするためには、これに加えWaves Nx Virtual Mix Room over Headphonesというプラグインも必要です。

 

Quadro構成(L、R、Ls、Rs)のオーディオ・トラックか、グループチャンネルを立ち上げ、B360をインサートします。

Cubaseのインストゥルメント・トラックは、ステレオ・トラックで立ち上がるためか、インストゥルメント・トラックにB360をインサートしても正しく効果がでません。アウトプットを4chバスにしても、ZとXの情報が書きこめていない模様です。インストゥルメント・トラックは4chのグループ・バスに送ってから、Bフォーマット化するのがおすすめです)

 

(ちなみに他のDAWでは、以下のようにB360を最終段にインサートした瞬間に、自動的にそのトラックがB-format用のトラックに変化するというのが見られます。これはWavesの公式解説動画です)

www.youtube.com

 

 

②【モニター方法】上記のQuadro構成のオーディオトラック(グループチャンネル)、およびB360でB-format 1st order化したものを、通常のミキシングと同じように、4chのマスターバスを作り、そこに送ります。

4chのマスターバスに、Nx Ambisonics Quadをインサートします。これは4chの信号をヘッドホン用の2ch信号(バイノーラル音声)に変換するものです。また、カメラでの顔認証により、VR状態で確認できます。

 

③確認が完了(あるいは確認せず勘でいく)できたら、マスターバスのNx Ambisonics Quadは外し、4chのwavで書き出します。

 

以上でVR音響(Ambisonics B-format 1st order)の作成が完了です。

VR音声ファイルは今回の場合(B-format 1st order)、従来の4chの音声ファイルではあるが、その内容がLRLsRsからWYZXに変わっているもの、という解釈ができます。

 

ではこのVR音響を再生してみましょう。ここでは私が適当に作ったAmbisonics B-format 1st order のVR音声ファイルを貼っておきます。

ambitrap.wav - Google ドライブ

 再生方法は、このファイルを直接ダウンロードして頂き、このweb player等を使用し、ヘッドホン・イヤホンで確認してみてください(Googleドライブ内でのプレビュー再生ではVRにはなりません)。

labs.plan8.se

再生方法としては、こういった専用のプレイヤーなどを使って再生(再現)します。音声ファイル内の情報が置き換わっているので、それが適切にデコードされる必要があります。また、画面上の↑↓→←コントローラーで操作する、またはカメラで顔認証してその向きと同期する、その他加速度センサーで向きを同期する、などでVR空間を動けるようにすることも必要でしょう。

 

Youtubeの場合、「Youtube 360」などで検索すると、VR動画が出てきます。そのVR動画は、左上のカーソルや、画面上をドラッグすると動かせると思います。これはYoutubeの動画再生プレイヤーに、VRに対応する機能があるためです。VRメディアを再生するためには、それに対応する機能を持っている必要があります。

 

ちなみに、VRというと最近流行ではありますが、その歴史は意外と古くからあるようです。詳しく解説されているサイトを貼っておきます。

サラウンド寺子屋塾 5.1 Surround Terakoya Lab: AMBISONICの原理と制作の実際 1992年 Ambisonic 資料より

 

・最後に

この記事はVR音響作成・VRミキシングをするための初歩的な解説として、参考になれば幸いです。web上の記事やメーカーの説明、マニュアルを見ましたが難しい印象を受けたので、自分なりにまとめました。

今後はこういった立体音響をどう使うか?という研究をしているので、実践的なことを試し、書いていく予定です。

あとはWavesの回し者と思われているかもしれませんが、ぶっちゃけこれはかなり面倒くさいプラグインです。B360は$299、モニターするプラグインのNxも$99と高額な割に、1st orderまでしか対応していないようです。。。

同様のソフトでProtoolsの12.8.2から追加された、Facebookプラグイン FB360 Spatial workstationはそもそも無料で公開されており、それはB-format 2nd order(9チャンネル)に対応しているようです。