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DJ XROAD (DJ Cross road) ディージェイ・クロスロード バイノーラル・プロセッシングやAmbisonicsなど

DJ XROAD Binaural Mixed EP「Binauralize」解説!

DJ XROAD Binaural Mixed EP「Binauralize」解説!

 
こんにちは!DJ XROAD(ディージェイ クロスロード)と申します。ここでは、私が先日より販売している立体音響EDMのEP「Binauralize」について、解説しています。
 

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 DJ XROAD Binauralized 1st EP "Binauralize"  6 tracks (Binaural Mix 3 track, stereo Mix 3 track)¥500
 
トラックリスト
1, Aim for the sky -Binaural Mix-
2, Crazy Future - Binaural Mix-
3, Dream -Binaural Mix-
4, Aim for the sky (stereo)
5, Crazy Future (stereo)
6, Dream (stereo)
 
このCDには、バイノーラル・プロセッシング技術を用いて、ヘッドホン/イヤホンのためのバイノーラル・ミキシングをした楽曲を収録しています!(Binaural Mix表記のあるものがそれです。)
バイノーラル・ミキシングとは、ヘッドホン内で従来のステレオにある左右だけでなく、上下や前後、ヘッドホンの横(頭外)など、ヘッドホンの外側に至る360度の立体音響を再現できる技術です。このCDのBinaural Mix楽曲は、それを生かしたミキシングを行いました。
 
ぜひヘッドホンかイヤホンにて立体音響を体感していただき、楽しんでいただければと思います。
また、従来のステレオと比較しやすいよう、通常のstereo Mixも収録しました。このステレオ・ミックス音源は、バイノーラル・ミックス音源との比較のほか、通常の配置のスピーカーで鳴らす場合などにはこちらがおススメです。
 
以下はそれぞれの曲の歌詞&楽曲解説です。
【1曲目】 Aim for the sky -Binaural Mix- BPM150 Am Hardstyle
[lyrics]
It is a time to open your eyes
we can see the landscape
to breath in the air, spread your arms
we're feeling wind blow
 
we're waving in the breeze
and dream of glory
at crest of a hill, shine on you
and broaden your world
to aim for the sky
 
oh yeah (oh-yeah-oh) I see the blue sky
oh yeah (oh-yeah-oh) I feel the blue sky
 
It is the time to raise up your hands
we light up the darkness
to break in the clouds, spread your wings
we're seeing new world
 
we're praying for the free
and making our story
and bless of the green is sign for you
to fly to the new world
to aim for the sky
 
oh yeah (oh-yeah-oh) I see the blue sky
oh yeah (oh-yeah-oh) I feel the blue sky
 
oh yeah (oh-yeah-oh) I see the blue sky
oh yeah (oh-yeah-oh) I feel the blue sky
 
この曲はEDMというカテゴリの中のHardstyleというジャンルの曲です!(もっと厳密にいうとEuphoric Hardstyleといいます。)
BPM150前後で、サビのキックとベースが一体化したキックベースと、カウベルのようなパーカッションの音、キラキラしたシンセメロ(特にEuphoric hardstyleの場合)が特徴です。また、リバーブをかなりかけてwetな空間を演出しています。
ボーカルは海外組VocaloidのAvannaです。テーマはAim for the skyという、「空に向かって手を伸ばす=目的に向かって進む」というような意味をもつ英語の詩的な表現で、そのことわざに実際に空へ飛び立つような世界観を掛け合わせた作品です。この曲は、ステレオ音源を先に作ってから、Binaural Mixにリミックスした感じです。
 
バイノーラル・ミキシングの特徴としては、従来のステレオよりさらに広い空間を演出するようリバーブや音を広げています。
テケテケテケというPluckと、サビの裏打ちのカオス・シンセパッドをヘッドホンの横(外側)に、
ボーカルを前方に、シンバルは真上に、透明なシンセパッドを全体になど配置しています。
 
動きのあるものとしては、最初のイントロにあるリバースクラップ(1回手拍手する音を逆再生したもの)とそのディレイ成分を、下方(座った状態でいうと腿のあたり)からどんどん後ろに消えていくようにしています。
ライズアップ(サビ前のピッチが上がる部分)では様々な要素を下から上にし、サビの直前の最後のカウベルのようなパーカッションはかなり上に配置しています。
 
ほかにはシンセのサブリード(サイン波)は右上と左上にうっすらと、コーラスはBメロ時は頭外(横)の右上と左上、最後の大サビではすぐ左後ろと右後ろにしています。バーブ成分は各音にかけているのと、全体に定位するシンセパッドの音にかけています。
 
サビでのキックベースカウベルのようなパーカッションはヘッドホンの中、つまり従来のステレオ音源で配置しています。ここでは、従来のステレオ音源とバイノーラル音源を同時に1つの音源の中で共存させています。これは、低音はそもそも定位感があまりない(音がどこにあるのかわかりにくい)のと、音楽的な土台としての安定性を考慮して、空間の真ん中に配置しました。また、バイノーラル・プロセッシング処理をすると、多少音が変化する場合もあるので、キックにはバイノーラル・プロセッシング処理をしなかったという感じです。
 
※ここでは、音の配置を記載していますが、音の定位感の感じ方については個人差がありますので、必ず上記のように感じ取る必要はございません。詳しくは後述します。
 
ちなみに、バイノーラル・プロセッシング処理をすると、音が変わってしまうことがありますが、私の場合はバイノーラル・プロセッシング処理をした後からシンセサイザーの音作りやEQなどの処理をすることで、なるべくその影響を緩和させています。
 
 
 
【2曲目】 Crazy Future -Binaural Mix- BPM150 FutureBass x EuroBeat Am
この曲の歌詞はDrop前の「People are you ready~!?」だけです。ほとんどインスト曲となっています。
BPM150のAm、ジャンルとしてはユーロビートとフューチャーベースを掛け合わせた感じで作りました。
Pluckフューチャーベースの音(キラキラした音)を頭外(横)に、ハイハットを右後ろに、スネアを左後ろに、クラップ(手拍子)を頭の上に、シンバルをさらにその上に、リード(ホイッスルのような音)を前方に、キックとベースはステレオ音源です。声ネタは頭外(横)の上方に、シンセパッドバーブを全体にという感じです。
ライズアップは1曲目同様、下から上に上がっていくようにしています。1曲目と違うことは、この曲のライズアップにはEDMでよく使われるEndless Smileというエフェクターを、上に上がっていく音にかけています。(シュワ〜といいながら低音が消えていき、高音だけになっていく音)
 
この曲は全体的にタイトに、1曲目がウェットなのに対してドライに作ったので、定位感は分かりやすいかと思います。この曲はバイノーラル・ミックスをする前提で、ステレオより先に作っているので、1:23あたりからのフューチャーベース・ドロップ部分などはかなりアグレッシブな処理をしています。
 
色分け
水色FutureBass(キラキラしたもの)
ピンクリード(ホイッスルのようなもの)
順番としては、左右横&左後方右から左へ、音の幅を広げて、右頭部を包み込む左から左下左右横&右横左右やや上真上真上にフューチャーベースと、真上からリードが左下に急降下からの右下後から前&前方で口笛左右やや上フューチャーベースのLRの内Lは頭外(横)の左上→左下→真左、Rは頭外(横)の右下→右上→真右
という動きになっています。(わかりにくくてすいません。)
 
 
 
【3曲目 】Dream -Binaural Mix- BPM70 C Ambient,Chillout,healing
アンビエント楽曲です。1,2曲目の音も交えながら、幻想感のある、よく眠れそうな曲にしています。この曲もバイノーラル・ミキシングを先に作曲しています。
シンセ・パッドバーブを全体に、リードは上方に、その他様々なエフェクトをいろいろな定位に散りばめています。リバースクラップは下方で反復し、シンバルは上方で反復します。
 
このバイノーラル・プロセッシング技術の元になる、ダミーヘッドマイク録音によるバイノーラル録音の歴史は古くからあり、こうしたアンビエント楽曲や、環境音楽によく使われてきました。この曲も、もっとも基本的なヘッドホン内の立体音響の使い方の一つといえるものです。音が頭の外に定位していることで聴き疲れにくい効果が得られることもあります。
バイノーラル・プロセッシング技術によって、現実での実現が難しい音響を作り出すことができたので、この曲のこのミックスと、この音響を生むことができました。
 
4、Aim for the sky (stereo)
5、Crazy Future (stereo)
6、Dream (stereo)
 
これら3曲は、ステレオ・ミックスバージョンです。バイノーラル・ミックスとの比較や、スピーカーから再生する場合などにご使用されることを想定しています。もちろん、バイノーラル・ミックスよりもステレオ・ミックスの方が好きという方もいらっしゃるので、その場合はこちらをお楽しみいただければ幸いです。4、のAim for the skyはもともとステレオで作曲し、5、のCrazy FutureとDreamはバイノーラルから作曲しました。もちろん、ステレオでも楽しめるよう、MS処理といって音をヘッドホン内の左右に目いっぱい広げたり、左右のパン(音の位置)を激しく動かしたり、奥行きをつけたり、ステレオも十分によい仕上がりとなっています。
 
ここまで、今回のCDの収録楽曲について解説しました。ただし、立体音響の感じ方には個人差があります。また、最初は分かりにくくても、何度か聴くことによって知覚できるようになってくることもあります。わからなかった場合もどうか諦めずに、このCDを取っておいていただきたく思います。
 
上記の位置情報などは作曲者によって想定された定位感ですので、ほかの方はまた違った定位に聴こえたり、または定位がどこにあるのかわからない場合もあります。これはバイノーラル処理が、人間の頭の大きさなどを平均化したモデル(ダミーヘッド)に基づいて行われていることが多く、その結果聴き手によって個人差が出てしまうことがあるためです。また、前方定位についても、視覚情報なしで知覚できるとされる音源はほとんどなく、前方と後方はどっちがどっちかわからない可能性が高いという言及もあります。
 
こうした課題がバイノーラル音源にはつきものなのですが、このCDではそれも踏まえて、バイノーラル・ミックスがステレオ・ミックスと比べてどこまでやれるか、といったことにある種挑戦したCDでもあります。作曲者自身としましては、特にEDMなどの音数の多いジャンルにおいて、ステレオより音を置けるスペースの選択肢が増えて、音の分離がよくなったり、聴き疲れにくくなったりしたことは実感しています。Crazy Futureについては、バイノーラル・ミックスを作ってからステレオ・ミックスを作るときに、「今までこの音はステレオのどこに置いていたのか?」と、迷ってしまいました(笑)
また、Dreamなどアンビエント系の空間表現や、Crazy FutureのBinaural Mixように定位をさまざまな方向に飛ばしまくるなどの、音楽的表現、音響的表現の可能性にも新たな可能性を感じられました。
 
聴いてくださる方には、なんとかこの立体的表現が伝わることを願ってやみません。(もし無理でしたならば、通常のステレオ3曲のEPとして楽しんでいただければと思います)もしヘッドホンで聴くならバイノーラル・ミックスもアリだなと思ってくだされば、このCDは近年盛り上がっている立体音響音源の走りとして(ほかにもいろいろな方々がやっていますので、ぜひ聴いていただくことをお勧めします!)このCDもかなり価値ある1枚となるでしょう!
 
その他ご質問があれば、このはてなブログやメール、twitterFacebookなどでお気軽にご連絡ください。
mail endycomposer@gmail.com
 

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Waves B360 Ambisonics Encoderの使い方

ここでは、DAW上におけるWaves B360 Ambisonics Encoder の使い方を解説します。

 

なるべくわかりやすいように解説しておりますので、正確な言葉の定義などは、メーカーのHPなどにて確認してください。

 

これはWavesプラグインですが、ほかにもFacebookから出ているFB360など、ほかのVR系プラグインでも参考になると思います。

 

今回はCubaseで解説します。ほかのDAWでは微妙に必要な操作が違ったりします。

 

このプラグインは簡単に言えばVR音響を作れるものです。このプラグインが行う処理としては、4chのマルチチャンネルの音声ファイル(Quadro音声ファイル)の情報を書き換えているようです。Quadro音声ファイルはL、R、Ls、Rsという構成で、その情報の内容は

L Left 左前の音量

R Right 右前の音量

Ls Left-surround 左後ろの音量

Rs Right-surround 右後ろの音量

という感じになっているのですが、

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この情報をこのプラグインではW、Y、Z、Xという情報に置き換えています。これは

W 全体の音量

Y 左右の広がり (Yは縦のイメージがありますが横)

Z 上下の広がり

X 前後の広がり (Xは横のイメージがありますが前後)

参考文献:アンビソニックに関するあれこれ - Qiita

という情報になっています。

(このプラグインにおいては、YZXは「広がり」というより「中心からの距離」を表しているように感じられる)

従来のQuadro形式と同じ4ch形式でも、このWYZXの情報であれば、上下も表現できるようになります。

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この音声ファイル形式をAmbisonicsのB-formatの1st orderというようです。詳細な言葉の意味は話が長くなるので置いておきます。

 

 【実践】

では、CubaseでVR音響を作っていきます。ほかのDAWでも、基本的には同じ要領で可能だと思います。

 Ambisonics B-formatの1st orderでは、4chの信号を扱えるDAWとオーディオドライバーが必要です。オーディオインターフェースとそのドライバーには2OUT以上は無い場合も多いので、ASIO4ALL(無料)などをインストールされることをお勧めします。

また、このB360でのミキシングをDAW内でプレビューするためには、これに加えWaves Nx Virtual Mix Room over Headphonesというプラグインも必要です。

 

Quadro構成(L、R、Ls、Rs)のオーディオ・トラックか、グループチャンネルを立ち上げ、B360をインサートします。

Cubaseのインストゥルメント・トラックは、ステレオ・トラックで立ち上がるためか、インストゥルメント・トラックにB360をインサートしても正しく効果がでません。アウトプットを4chバスにしても、ZとXの情報が書きこめていない模様です。インストゥルメント・トラックは4chのグループ・バスに送ってから、Bフォーマット化するのがおすすめです)

 

(ちなみに他のDAWでは、以下のようにB360を最終段にインサートした瞬間に、自動的にそのトラックがB-format用のトラックに変化するというのが見られます。これはWavesの公式解説動画です)

www.youtube.com

 

 

②【モニター方法】上記のQuadro構成のオーディオトラック(グループチャンネル)、およびB360でB-format 1st order化したものを、通常のミキシングと同じように、4chのマスターバスを作り、そこに送ります。

4chのマスターバスに、Nx Ambisonics Quadをインサートします。これは4chの信号をヘッドホン用の2ch信号(バイノーラル音声)に変換するものです。また、カメラでの顔認証により、VR状態で確認できます。

 

③確認が完了(あるいは確認せず勘でいく)できたら、マスターバスのNx Ambisonics Quadは外し、4chのwavで書き出します。

 

以上でVR音響(Ambisonics B-format 1st order)の作成が完了です。

VR音声ファイルは今回の場合(B-format 1st order)、従来の4chの音声ファイルではあるが、その内容がLRLsRsからWYZXに変わっているもの、という解釈ができます。

 

ではこのVR音響を再生してみましょう。ここでは私が適当に作ったAmbisonics B-format 1st order のVR音声ファイルを貼っておきます。

ambitrap.wav - Google ドライブ

 再生方法は、このファイルを直接ダウンロードして頂き、このweb player等を使用し、ヘッドホン・イヤホンで確認してみてください(Googleドライブ内でのプレビュー再生ではVRにはなりません)。

labs.plan8.se

再生方法としては、こういった専用のプレイヤーなどを使って再生(再現)します。音声ファイル内の情報が置き換わっているので、それが適切にデコードされる必要があります。また、画面上の↑↓→←コントローラーで操作する、またはカメラで顔認証してその向きと同期する、その他加速度センサーで向きを同期する、などでVR空間を動けるようにすることも必要でしょう。

 

Youtubeの場合、「Youtube 360」などで検索すると、VR動画が出てきます。そのVR動画は、左上のカーソルや、画面上をドラッグすると動かせると思います。これはYoutubeの動画再生プレイヤーに、VRに対応する機能があるためです。VRメディアを再生するためには、それに対応する機能を持っている必要があります。

 

ちなみに、VRというと最近流行ではありますが、その歴史は意外と古くからあるようです。詳しく解説されているサイトを貼っておきます。

サラウンド寺子屋塾 5.1 Surround Terakoya Lab: AMBISONICの原理と制作の実際 1992年 Ambisonic 資料より

 

・最後に

この記事はVR音響作成・VRミキシングをするための初歩的な解説として、参考になれば幸いです。web上の記事やメーカーの説明、マニュアルを見ましたが難しい印象を受けたので、自分なりにまとめました。

今後はこういった立体音響をどう使うか?という研究をしているので、実践的なことを試し、書いていく予定です。

あとはWavesの回し者と思われているかもしれませんが、ぶっちゃけこれはかなり面倒くさいプラグインです。B360は$299、モニターするプラグインのNxも$99と高額な割に、1st orderまでしか対応していないようです。。。

同様のソフトでProtoolsの12.8.2から追加された、Facebookプラグイン FB360 Spatial workstationはそもそも無料で公開されており、それはB-format 2nd order(9チャンネル)に対応しているようです。